茂木喜久雄  
  

 


 

 

 


 

 

 読書をすること=新しい人と出会うこと

 私はこれまで小学2年生から大学4年生、社会人というほとんどの年齢の学生を指導し、学力的にもあらゆる偏差値の学生と接してきました。その中で感じたことは、学校教育で付せられた学力の順位は関係なく、みんな潜在的な能力自体はほとんど変わりがないということです。何か意味のない順位を付けられているだけです。

 ただ異なっている部分が1つあります。それはいかに多くの人と接してきたのか?=(または)多くの本を読んできたのか?=(または)いかに多くの経験を通過してきたのか?という点です。

 経験は年齢とともに嫌でも増えていきます。不思議なことに中学校時代に苦手だった科目も大人になると、自分の子どもが苦労している問題が簡単に見えてくるものです。

 私たち日本人は、もともと勉学とは、「読み、書き、そろばん」のみで、その他のことは、自然界から学んできました。

 自然と接する機会が少なくなった今日で、短期間で学力を著しく拡大する方法は、読書習慣を身につけ、読書量を増やすことです。読書と言うのはある程度の集中力も必要だし、慣れていないと辛い作業です。しかし、慣れてくると、ドンドン新しい知識が身に付くし、短い時間で多様な価値観に触れることができます。

 大学のゼミなどで強制的に年間150冊読まされるところもあるようですが、上場企業の幹部クラスは忙しくても年間200冊以上、役人も200冊以上はじっくりでなくても読んでいると思いますので、できれば時間が自由である大学生なら1日1冊を目標にしてもらいたいものです。

 とりあえず、2週間で1冊、次に1週間で1冊、これくらいのペースから始めて年間100冊を目標にしましょう。


 ある程度の大人は、1分しゃべっただけで、その人がこれまでどのような本を何冊読んできたのかが判ります。

プロセス―1: 最後まで読み終えるという読書スタイルを身につけよう。

「読書」というと、学校教育の延長で退屈なものという印象を持つ人もいるでしょう。実際に読書を好む教員は義務教育ではほとんど皆無であり、国語のテストのための技術として処理されてきたはずです。

まずは、読書を楽しむために、一気に読むという読書習慣をつけましょう。どんな本でも構いません。ハリーポッターでも村上春樹でも。ただし、最初は読んでいてつまらないものはすぐにやめてください。時間のムダです。例えば、個人の好みはあるはずですが、紹介する下記のものはあっという間に読んでしまった記憶があります。最初は何事も練習です。小説でも論文でも何でも構いません。好きな本を早く読み、できれば読んでいることを忘れるくらいのテンポを身につけたいものです。

@推理小説

 

A推理小説(ボリュームあり)

 

B名作

 

C経済小説

 

読書のスタイルはさまざまです。どうしても筆記用具を持って線を引きながら読むという人もいます。声を出しながら読むという人もいます。腕立て伏せをしながら…という人もいました。

自分が本を読むスピードがわかれば、合格目標のスケジューリングも容易になるでしょう。

 ※どうしても落ち着きがなくて長い時間机に向かっていられない人は、どんどん外に出ても構いません。その代わり、外に出て携帯電話をいじったりゲームをしていても意味がありません。電車という閉じ込められた空間は意外にも読書に最適なのです。私は学生時代に青春18切符で札幌まで行ったときに電車の中で上記の「白昼の死角」を読破しました。これだけブ厚い本が読めれば読書に自信が持てますよ!


プロセス―2: 同じ作家の本を複数読む

 たまたま機会があって上場企業の社長がどんな読書スタイルをもっているのかを聞くことがありました。1人の社長は学生時代は新聞を隅から隅まで読んだと言いました。これは、非常に重要なことで、記事というものは毎日読むことによってその繋がりや関係を知るという点が本質であると語りました。

 同様にどのような本でも、気に入った作家のものは2冊以上読んでみるとより読書に奥行きが出てくると思います。

 もう1人の社長もやはり学生時代にあるジャンルの文庫をすべて読みきったことを話されました。

 何かで「結びついている」。それが自分なりに見えてこえば「読書習慣」が身に付いたと言っていいでしょう。

 ※ここまで、読書習慣ができたら、中学校時代や高校時代の「現代国語」の教科書を読んでみましょう。1日、もしくは、2日〜3日で全部読みきってしまうと思います。学校ではこれを1年間もかけて読まされるのです。な〜んだ、そういうことか!と思えたら、もう学校教育からの呪縛から解放されました。 これから、教師のためではなく、自分のための勉強が始まります。


プロセス―3: 自分の勉強を再起動させる

 さて、読書習慣が身に付いたら、自分の今までやってきた勉強に強化された読書習慣を導入させましょう。これまで難解に感じていた本もじっくり味わって読めるはずです。

 作家(著者)が思っていることはすべて文字になっているわけではありません。しかし、文字になっていない部分はその読書経験から頭の中で自動的に情報処理してくれるはずです。

 読書習慣を身につけることは、一見遠回りに思えるかもしれませんが、実は勉強をするうえで欠かせないものです。

 読書習慣があれば、もうどんな試験も怖くはありません。集中力もかなり備わっているはずです。


プロセスー4: 自然と向き合ってみる

 読書をしばらく続けていくと、ある疑問点にぶつかるはずです。

 それは、私たちが住むこの世の中は、実は言語で語られる部分はほんの少しであって、言語では説明できない自然界のルールがまだまだ無数に存在しているということです。

 つまり、世の中は、テストのような明確な解答が出せるシステムはほんのわずかであって、その大部分は決定論に基づいたような解答が出せない社会なのです。それをどのような形で相手に伝えれば良いのか?皆さん方が国際社会に出るのであれば、なおさらその疑問はこれから広がっていくでしょう。

 そのためにも、わずかな疑問点があれば、その都度、本を読んでいくという作業が一生続いていくかもしれません。一期一会、本を読むことは人と出会うこと。その人と謙虚に付き合ってみましょう。

 

 

 

 

 

 


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